どんな新製品コンセプト開発にも対応するコツ

マーケティング・コンサルタントをしていると、新製品開発も多岐に渡っていく。特に、コンセプト構築段階が重要となる。
定性であっても定量であってもコンセプト調査は「実際に作るわけにいかないが、実際に作った場面に近い状況」で反応を取りたいわけなのだが、その一方で、どんな会社や事業部であっても共通して求められるのが以下の二点である。


①想定ターゲットからの正確な受容に関する反応を得ること
②可能な限り、調査にかかる時間と費用を最小化すること


①+②はどの会社や事業部にもそれなりの独自のノウハウが存在する。ところが、そのやり方を普遍的と思うと悲劇が起きやすいのである。
ある会社に勤務していたブランド・マネージャーや新製品開発担当者が別の会社に転職する、ある事業部から別の事業部に移るなどといった状況で、今までのやり方が機能しないケースも多いからだ。


こういったケースの多くでは自分が経験を積んだコンセプト調査パターンを適用したために・・・
反応が取れないため正確な受容が見えない (→上記①に抵触)
次の開発ステップにもう一度調査をしなければいけない (→上記の②に抵触)
・・・・という状態になってしまっている。


こういったケースを事前に避けるために、ブランド・マネージャーや新製品開発担当は自分が扱うカテゴリーと新製品ベネフィットの違いに留意しながら、新製品コンセプト調査を設計するのが望ましい。


ここでは大きく4区分して説明する。 →参照:4区分の図表


解説すると、カテゴリー関与度の違い、想定しているベネフィット・タイプの違いで調査に準備すべき素材が異なることを意味している。
異なる対応で、それぞれが「実際に作るわけにいかないが、実際に作った場面に近い状況」の再現性が高まるのである。結果、①、②をどんな新製品開発においてもキープできることになる。


◆P-Hゾーン:
ラグジャリーグッズなど高級嗜好品での新製品開発
ここではブランド要素によって反応が変わる、情緒的ベネフィットがシンボルと一体化するとも言える。よって、そういったブランディング要素の候補案も策定して必須要素と一緒に消費者調査をかけなければいけない。新製品開発初期からデザイナーやクリエイターの参加が不可欠である。


◆P-Lゾーン:
コモディティ度合いが高く、単価の低い嗜好品での新製品開発
ここではラグジャリーグッズに比較して購入態度決定までの時間が非常に短い点が異なる。つまり、それほど情報量を与えらえない。コンセプト・シートに長々文章を書いてみせるなどはご法度である。これらを圧縮したコンセプト・スローガン候補とそこから受ける意味の理解などにポイントがある。


◆N-Hゾーン:
健康食品や医薬品など不満や不安を除去する関与度が高い新製品開発
ここでは反対に関与度が高いため、消費者が情報を積極的に取得・選別しようとするのでコンセプト・シートに文章(=ステイトメント)で提示しても問題なく、理性的な反応が受容とリンクしやすいので情緒的なシンボル要素は最小限でOKである。


◆N-Lゾーン:
コモディティ度合いの高いトイレタリーなどの不満除去を主眼とする新製品開発。関与度は高くないので情報量は最小限とし、ブランド・シンボルなども必要性が低い。そのための非常にシンプルなコンセプト受容性調査ができる。


ただし、新製品開発は常に「通常に対する逆張り」が有効なので、上記4区分は標準タイプと考えるべきなので留意すること。トイレタリーにラグジュアリーグッズの文脈を適用する、健康食品にお菓子の文脈を適用する、などといったコンセプトそのものが従来のカテゴリー否定ではそれに沿ったコンセプト・チェック素材が必要になる。


ブランド・マネージャーや新製品開発担当者は「今、自分がチャレンジしようとしているのはどの文脈のものか?」という観点を持つことが大切なのでり、一つのパターンで押し切ろうとするとき無駄や無理な消費者調査が起きやすいのである。


2007.5.9

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