成功事例―失敗事例からの学び型

■マーケティングの学び
セミナーなどでマーケティングを教える場合、「俯瞰できる大きなマーケティング体系図―シンプルな原理原則」をセットにし、その後、「マーケティング体系の中の個別知識―個別知識の運用スキル」という構造を持たせている。これは頭の中に白地図を用意し、そこに書き込みをしてもらう手順と思って欲しい。


しかし、地図は地図であり、実際の現場ではない。よって、地図にリアリティを与えたい場面に、マーケティング事例を紹介することになる。「ああ、あれがこのことか・・・」という感想によって、地図の読み方に慣れてもらえるからだ。


事例といっても、望ましいマーケティング活動、望ましくないマーケティング活動があり、成功事例ー失敗事例がその区分になる。ユニクロなら成功事例:ヒートテック、失敗事例:スキップなどだ。


■成功から学ぶ、失敗から学ぶ
さて、ここの成功ー失敗という二種類の学びの側面があり、どちらを重視してセミナーのテキストを構成するか、グループワークを組むか、という観点について解説したい。
まず、学ぶ状況には大きく2つの軸が存在する。


①「新規市場を創造するー既存市場で深耕する」軸
これは前者が未知なものが多く、後者が既知のものが多くあるという情報量の違いを示している。


②「主体者の視点―客体者の視点」軸
学ぶ当事者が実務そのものを主体的に進めるための視点を欲している場合と、客観的な視点からの学びを必要としている違いがある。


ゾーン別の成功事例―失敗事例の学び型チャート(pdf)


■4つのゾーンと中心事例
・ゾーンA:「未知の市場」×「客体の視点」
新市場を創造するといった場合、まずは、どういう成功パターンがあるかを知ることで土地勘を高める領域。新規開拓の必要性を考える入り口として学ぶ時には成功事例が有効である。


・ゾーンB:「未知の市場」×「主体の視点」
現在、新市場創造のプロジェクトなどのメンバーが推進に当たって、どのようなことが問題を起こしやすいかを習得したい領域。失敗事例によって、回避すべき大きな地雷を見えるようにする。


・ゾーンC:「既存の市場」×「主体の視点」
ブランド・マネージャーなどの既存ブランド育成担当者が売り上げを伸ばすための原理を学びたいケース。成功事例によって、実務で活用できるマーケティン知識を学びたい領域。
既存のマーケティング活動にはない新しい知識活用を成功事例に具体化する。


・ゾーンD:「既存の市場」×「客体の視点」
既存ビジネスが成功している企業や事業では自信から盲点が生まれやすく、市場自体の変質に対応できないことがあり、そういったことに警鐘を鳴らしたい領域。
トップブランドを持っている企業や、市場が急激に伸びることで売り上げに満足している企業に失敗事例で次の対応を考えてもらうようにする。


■選択の基準
教える立場、学ぶ立場の両方から見て、以下のようなことを意識的に選択に取り込むことが有効と言える。


・教える側の選択基準・・・人と場面での組み立て
事例は分かりやすいが、個別化されているので受講した人すべてに利くとは言えない。よって、常に「誰が」「どのような状況で」マーケティング知識を習得しようとしているのかを把握して、使い分けたい。


・学ぶ側の選択基準・・・自分の対極にある世界の探求
本にせよ、セミナーにせよ、学ぶ側がチョイスできる幅は広い。その時、いかに自分の置かれた立場と反対のものを選ぶことができるかが学びの効率化をあげることになる。


2010.1.5

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