リサーチの課題:一次・二次の根源にある零次情報の存在について

■リサーチの課題:一次・二次の根源にある零次情報の存在について


一般的なケティングの本には情報を一次情報、二次情報に分けています。しかし、実はもっと重要な情報として零次(ゼロジ)情報があります。零次情報は、ある人が体感できる範囲の情報を意味します。


・零次情報:体感ベースの情報。例えば、ある消費者に直接、いろんなことを尋ね、インターラクティブに取材するなどです。つまり、時間・空間を相手と共有したの中での経験


・一次情報:自分(自社)で調査を設計し、自分(自社)なりの視点でまとめられた情報。文字化、数字化されたものを共有する経験


・二次情報:第三者が調査設計し、第三者なりの視点でまとめられた情報。文字化、記号化されただけでなく、そこから解釈されたものを知る経験


当然ながら、零次情報は生生さが違います。しかし、一人の人が生活の中で体験できる情報には限りがあるために、一次,二次情報によって世界がどうなっているかを捉える必要があります。


優秀なマーケティング担当者はこのバランスに留意します。零次情報に常に触れる習慣を持っていることで、一次情報も瞬時に根底に流れる意味に行き着けますし、二次情報といえども自分なりの解釈で読み取れるようになります。


あっさり言い切ってしまうと、お客さんを見る目を養っておけば、文字や数字のデータからでも人物が浮き上がってくるということです。


もう少し詳しく見ると、0.5次情報、1.5次情報も存在することがわかります。デプス・インタビュー(1対1の定性調査)のケースで表してみます。


・0.0次情報:ある消費者に会って、話を聞く。その行動を観察する。(自ら直接、デプスインタビューを行うような状態という意味)
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・0.5次情報:デプス・インタビュー、グループ・インタビューに臨席し、被験者の言い回し、表情を見ながら話を聞く。(質問、被験者がコントロールされている分、零次より0.5次分、加工された情報という意味)
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・1.0次情報:デプス・インタビュー、グループ・インタビューの発言録を見る。定量調査のローデータ(生数字)を見る。
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・1.5次情報:デプス・インタビュー、グループ・インタビューの結果を、リサーチャーやコンサルタントのレポートやプレゼンで知る。(一次情報を第三者の視点から解釈して知る情報のために、通常の一次情報より0.5次分加工された情報という意味)


大企業に存在するマーケティング部門が機能しているかどうかも、この零次情報への態度で見分けられたりします。こういった零次情報に近づこうとする努力を怠り、一次情報、二次情報で済まそうという兆候があるマーケティング部門を持つ企業は意外と多くあります。


それも調査予算の大きい会社だったりします。なぜなら、お金があれば誰かがきれいなレポートにまとめてくれて、数行のフレーズに咀嚼してくれるからです。特に、マーケティング部門の管理職が、定性調査に立ち会う時間を惜しみ、部下に社内の会議を優先させるようになったら、そのマーケティングという組織は名ばかりと言えます。


マーケティング部門は消費者のことをより身近で感じ、語れるためのフィールドでなければ存在価値はありません。販売に詳しいだけなら営業部門で十分ですし、生産に通じているなら工場部門で事足りるでしょう。


ですから、マーケティング・コンサルタントとして率先して現場に立ち会います。その姿勢をクライアントのマーケターに見える形で伝えることがコンサルティングだと信じているからです。


2012.4.28
※近況報告で書きためたものを加筆修正

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