小さな会社が長生きするコツ:差別化ではなく、差積化へ

■差別化とは真逆にある差積化(させき・か)


小さい会社でマーケティングを考える時、「売れる」ことより「売れ続ける」ことを念頭に入れます。上手くいったら必ず誰かが真似してくるので、最終的には消耗戦になって、小さな会社の資源では不利になる恐れがあるからです。


差別化はスタート時の競合比較での優位点ですが、これだけでは危険ということです。働けば働くほど差別化度合いが薄まっていく傾向を避けるために、働けば働くほど他者が真似しにくくなる仕組みが必要なのです。


差積化チャート
拙著「ブランディングの基本」P112より


■ポイント1:累積効果


この累積的に競合との差異が高まることが差積化(させきか)です。造語として使っています。毎日の顧客から学んだちょっとしたことが累積され、後から積分してみると立派な競争優位なものだった、という構造です。


そのためには不断の努力が必要です。残念なことに、この努力を苦役と感じてしまえば何事も継続できないのが人の性です。よって、その習慣そのものに経営者自身、組織全体が価値を感じる工夫が必須となります。今日のささいな学びこそが楽しいね、といった共通の視点ですね。


ヤスハラ・マーケティング・オフィスは仕事で使うチャート(ppt)のストックは500枚以上あります。500枚ぐらい図表があると、どんな質問が出ても瞬時に応答できるものが最低でも1,2枚はあります。


視覚的に補足してくれるので、相手の理解を促し、その結果、コンサルティング品質をあげることができます。500枚を描くのは大変のようですが、創業から12年で溜めた数字ですから、日割りすれば1週間に1枚程度の努力の跡に過ぎません。


■ポイント2:公開効果


差積化するときに大切なことがもう一つあります。これは累積したものがある程度までになったら、積極的に公開することです。人に披露することで、新たな反応をもらって、バージョンアップを継続的にすすためです。この公開する場面をどう作るかが重要なポイントになります。


ポイント1の累積効果と簡単に言いましたが、現実にはなかなか大変です。もっとも難度を感じるのはネタ切れです。深堀ができない要素であれば差積化そのものに至れないのです。よって、蓄えるほどアウトプットを出すためには、インプットのためのヒントを周囲から調達するのが小さい会社や個人事業の肝になるのです。


自社でコミュニティを立ち上げたりするのも、顧客との関係を深くして継続購入を促すためよりも、気の利いた顧客とともに考えたり、創意工夫することで差積ネタを仕入れていくことなのです。


ヤスハラ・マーケティング・オフィスではワークショップ研究会なるものを2007年から立ち上げて、2013年度で140回の回数まで開催しています。これを通じて、研修やコンサルティング場面で実装するワークショップ・メニューを開発したり、プロトタイプを参加者に試してもらうなどして、ファシリテーション型のコンサルの価値向上のサイクルを作っています。この仕組みそのものが差積化なのです。


※2011年8月に近況報告で記載したものを加筆修正


2013.12.12

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