「新製品コンセプト開発パターン」で自社の持つ癖を知る

■新製品開発におけるコンセプト
新製品コンセプト(※サービス財であれば新サービス・コンセプトとなるがここではそれらも製品として捉え、統一して新製品コンセプトとする)は三つの要素で成立している。
シーズとニーズとアイデアである。  チャート1参照


この三つのうちどれが欠けても新製品コンセプトとしては不十分な結果となる。
・シーズ欠如:うまくいっても競合他社の参入を導く。サービス財など労働集約依存企業で起こりがち
・ニーズ欠如:すごい性能であっても顧客のベネフィットがないため、売れず。技術主導型の製造業で起こりがち
・アイデア欠如:ユニークな解決策、ユニークな使い方などがないため、付加価値が高められない。保守的な大企業で起こりがち


成功のためには、マーケティング部門や開発部門にこの3要素が常に一か所に集まる場を築くことが必須条件となる。


■新製品コンセプトを作る3つのルート
さて、この必須条件がクリアされても新たな障害が存在する。新製品コンセプトを組み立てる場合には、この三要素が同時に集まることはなく、通常はいずれかが起点になって組み立てられることになる。
三つのルートとは・・・チャート2参照


1)ニーズ・ルート
=ニーズ発見が起点となって、どのように独自の解決・満足提供ができるかを考えていくルート
2)シーズ・ルート
=着目するシーズが起点となって、どういうベネフィットを提供できるかを考えていくルート
3)アイデア・ルート
=まずはユニークな発想があって、それを自社らしく具現化するためのシーズと、どのような顧客満足を提供できるか探っていくルート


しかし、コンサルタントとして多くの企業を見ていくと、ほとんどの企業がこの3ルートのどれかに偏ったコンセプト開発をしているのである。もちろん、偏りは個性とも言えるので悪いこととは言えないが、開発パターンが行き詰ったときに視点を変えるやり方を持っておくのも有効のはずである。
「3ルートを状況に応じて使い分る」のは必要条件ではないが、ある方が望ましい新製品開発の十分条件と言える。


■3パターンの得意領域と苦手領域
では、この3パターンはそれぞれどのような特徴を持っているかを整理してみよう。
まず第一歩は顧客サイドが求める解決・満足のニーズ特性によって変わる点である。
マズローのよ欲求段階を思い起こしてもらえれば分かりやすいが、「不満や不安を解消させたい」「満足、安心をより高めたい」「なくても困らないが、楽しさや驚きを得たい」という段階が存在する。三つのルートはこの3区分に対して得手・不得手を持つのである。  チャート3参照


【ニーズ・ルートの得手】
・N-領域:ニーズ・ルートが最も得意とする領域であり、お客様相談室へのクレームや顧客へのインタビューなどを通じてニーズが顕在された時点でスムースに作業ができる。
トイレタリー企業ではここに偏りが見られる。


【シーズ・ルートの得手】
・S+領域:シーズ・ルートが得意とする領域である。これは既にベネフィットが成立している商品群が存在し、これを前提に研究所などで技術開発が進めら得ていることが多い場合に有効となる。
家電企業ではここに偏りが見られる。


【アイデア・ルートの得手】
・I∞領域:アイデア・ルートが得意とする領域である。クリエイターなど、個々のアイデアが生かされるため、独自性が高く、かつ、新市場を作る可能性が高い。よって、コンテンツ依存度の高い企業で多くみられる。
エンターテイメント企業ではここに偏りが見られる。


このように見ていくと、偏りをなくすこと自体に意義があるとも言える。


たとえば・・・
トイレタリー企業がアイデア・ルートでユニークなブランド・ストーリーやシンボルを作ってからシャンプーのコンセプトを組み立てたる。(例:P&Gハーバル・エッセンス)
家電企業がニーズ・ルートでユーザビリティ改善を足し上げて洗濯機のコンセプトを組む(例:松下ななめドラム)、携帯電話企業が個人のデザイナーのクリエイティビティからコンセプトを創る(例:AUインフォバー)。
エンターテイメント企業が生活者のニーズからTVゲームのコンセプトを組み立てる(例:ニンテンドー脳トレ)など、バリエーションを増やすことができる。


意図的にルートを変更すること自体が新たな競争優位をの源泉になるのである。


2007.12.09

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