企業間コラボレーションのための構え:「天国と地獄」フォーマット

■目的の流動性
企業と企業がコラボレーションする場合、どのような点に留意すべきかを整理しておく必要がある。なぜなら、コラボレーションの目的が流動的であることに特徴があるからだ。


・コラボレーションが最終目的ではないこと
チャートにA社・B社という二つの会社の目的を方向に置き換えたものがある。A社がブランドを提供し、B社がそれを反映させた製品を作って販売する場合、A社がオリジナル商品を提供し、B社が自社販売網で販売する場合など、ケースは多岐に渡る。
コラボとはお互いがシーズを補完し、新たなニーズを発掘することで、双方がメリットを得る構造を作ろうとする一連の行為、と言える。


コラボレーションの目的と天国と地獄フォーマット(pdf)


・コラボの目的が流動的になる理由
A社もB社もそれぞれビジネスを独立して行っており、それぞれがビジネス・ゴールを目指している。ここに共有関係はない。コラボはその道程のひとつの中間ゴールであり、そこを経由して最終ゴールを目指そうという動きに過ぎない。


①進捗内容が期待以下:
最終ゴールから逆算し、全社的に見て期待通りの進捗内容になってない場合はコラボレーション中止となる可能性がある。


②ビジネス全体への貢献強化―収益:
コラボレーション企画推進中、A社がコラボでのビジネス貢献を極大化させるために、B社に収益改善(つまりA社利益率拡大)を要求する。ケースXの場合、B社のビジネスゴールからは離れてしまう。


③ビジネス全体への貢献強化―労力:
コラボレーション企画推進中、A社が短期的な自社ビジネス貢献を必要とする場合がある。(業績が思わしくないなど)A社は早期実現のためにB社へ作業スピードアップを求め、結果として、B社が必要以上の労力傾注を余儀なくされる。ケースYの場合、B社のビジネスゴールからは離れてしまう。


■流動する目的に対処できる地図を持つ
事前に目的を確認していれば、コラボのゴールはズレることがないように思えるが、ここには同床異夢のパワーが発揮される構造があるため、進行中に目的は同じでも解釈が変わる宿命を持っている。よって、コラボレーション活動に従事する人々は常に流動的な状況を確認しながら進む地図が必要となる。


・天国と地獄フォーマット
理想は自社と相手ともにハッピーなゴールを実現できることである。しかし、そこに行き着くことが保証されていない以上、コラボレーション活動はリスクを感知し、対処せねばならない。
天国と地獄フォーマット(チャート参照)で、自社―相手企業の目指すゴールを明確にし、かつ、避けたいゴール像も設定しておく。4つのゴールが想定できる。


・シナリオ作成
これらの組合せは「自社天国×相手天国」「自社地獄×相手天国」「自社天国×相手地獄」「自社地獄×相手地獄」となり、それぞれに想定されるシナリオを書いてみる。ここでのシナリオは一つで構わない。なぜなら、これは地図を肉付けするものであり、実際には思いも掛けない障害や要求が出てくるものなので、その時は、それらの用をを組み込んで再度、シナリオを書けば良いからである。


・4つのシナリオが教えてくれるもの
「自社天国×相手天国」:基本的なシナリオ。
現在のコラボ活動(準備―実施いずれでも)が健全に推移しているかどうかの目安となるもの


「自社地獄×相手天国」:修正強化のシナリオ。
自社への負担が高くなっていく場合にどう対処すればいいかを考える。こちらに主導権を握れるよう、自社が提供するシーズ類の専門性強化やブラックボックス化を準備する


「自社天国×相手地獄」:より戻しのシナリオ
相手企業内での負担感を強い場合、短期的にはOKでも、長期的には自社の評判を落とす可能性がある。ここでは自社天国めの道を阻害しない方法での協力を準備しておく。


「自社地獄×相手地獄」:避難のシナリオ
コラボレーションでの重要な課題が解決しない、全社的な動きからの中止要請など最悪の予兆があった場合、いつ中止スイッチを、どのように押すかを準備しておく。また、避難方法(投下費用の極小化の可能性など)を考えておく。


2010.5.7

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