ファシリテーション講座「収束のポイントは目撃現場」

グループワークでファシリテーションをしていくと、時間的な流れでは、テーマに対して大きくは拡散共有期(前半)、収束納得期(後半)に分かれます。前半のポイントはいかにして「なんでもあり」にして情報・意見・アイデアを集めるかです。判断保留がファシリテーターの最重要な役割となります。否定しない。


しかし、永遠そのまま広げていくわけにはまいりません。本日のグループワークの成果に向かう時が来ます。収束納得期です。腕の見せ所になるのが拡散した情報を収束させる場を作ることです。


たとえば、小生の典型的な例に商品開発のためのコンセプト出し、というグループワークです。「商品開発のためのアイデアをたくさん出したはいいけれど絞りきるのに難儀しています」というものがありました。とあるB2B企業が次世代に向かって新しい市場を創れそうな商品を準備したい、そのための開発テーマを決めたいというのがグループワーク実施の動機です。


しかし、主要部門の主要な社員が商品開発アイデアを出し尽くしたものの、100ぐらいある案をどうやって選択していけばいいのかについてはやはり悩まく、そこで、小生が呼ばれることになったのでした。


さて、100のアイデアがあっても、それを収束する手立てがないと、どうなるか? 最終的に投票数で決めるような乱暴な手段で終わってしまいます。投票が悪いとは言えないものの、ただのコンテスト形式のワークなら集まってやる必然性もなくなります。アイデアを社内公募すればいいだけの話ですから。


おまけに、人気投票で選ぶものはだいたいが反対者のいない手堅いが面白みのないもの、または、斬新だが抽象的すぎて実施の手がかりさえないものになっていくのが相場です。こういった場合、100の情報をいきなり1(ないしは2,3の)にすること自体にこそ課題があるのです。収束は場が重要で、その収束プロセスに目撃者となることがキモだからです。


そこでのアプローチを、事例に沿って解説しましょう・・・


●100のアイデアをポストイットに書き写し、そこに「なぜそのアイデアが出たか、背景(きっかけとなる参照や経緯)を発案者に追加で書いてもらう
※その時は全員がその場にいなかったので、必要に応じて手分けして当事者に電話


●グループワークで100案に添えられた背景違いでポストイットをグルーピングする。その結果、8区分に分かれた。
※グループワークは2つのグループで行い、出来上がった分類をお互いにシェアして、最終版に至る


●全員で8区分に対し①自社が得手で良く行うパターンのもの、②自社ではあまりやらない未知のパターンで、それぞれ上位3区分を選ぶ
※①と②は同軸の両端なので、8区分は①から②に向かって(同時にその反対)グラデーションができ、一列に並ぶ


●①の上位区分の中にあるアイデアを選ぶが、そこで終わらせないで必ず②の上位区分の中にあるどれかのアイデアと組み合わせる。これは比較的手堅い商品開発の方向性。この逆の組み立ては比較的革新的な方向性。
※手堅すぎ、世離れすぎを避けながら、それでいて100のアイデアの発案者たちも納得して最終案に向かっていける


こんな流れです。
俯瞰してみると、最初に100あったものが8になり、8が2になっていく訳です。2の乗数で見ていくと、6か7(2の6乗=64、2の7乗128、100案あるというのはその間という意味)が3(2の3乗=8区分)、最終的に1(2の1乗=2方向)となってます。


6→3→1、つまり、数字がほぼ均等に減っていく収束ですね。関係者に収束の現場の目撃者になってもらうことが重要なので、ファシリテーターはひたすら彼ら彼女らの表情から「腑に落ち感」を読み取っていくことになります。ちょっとでも曇ったら、すかさず立ち止まって問いを投げます。目撃しているかどうかを確かめながらの進行です。


収束はプロセスが全てです。ここが共有できていれば選んだ案が途中でつぶれても、次の一手が浮かんできやすいんですね。そもそもアイデアは孤立した存在ですから、それらから独自の文脈を浮かび上がらせることが狙いとも言えます。


2020.6 近況報告から加筆・修正

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