キャリア・コンセプトを商品コンセプトフレームで外観する

【キャリア・コンセプトを商品コンセプトフレームで外観するとどうなるか】


キャリア開発という概念がある。


<キャリア開発とは、個人が主体的に自身のキャリアを捉え、スキルと知識を習得し、仕事を通じて成長していくことである。20世紀において、日本企業では終身雇用制のもと、従業員はひとつの会社で一生のキャリアを終えるのが当たり前とされていた。しかし昨今の経済情勢の変化により、個人のキャリアに対する意識も大きく変化し、個人が自分自身でキャリアに責任を持ち、キャリアを積み上げていくことが必要となってきた。そこで登場したのがキャリア開発という概念である>by exBuzzwords


ここでは「あるキャリアを積む」時、その選択を事前にどう想定するか、方法論を考えてみよう。もちろん、客観的にキャリア選択ができるのかどうかという、そもそもの疑問があることは承知の上であることは留意されたい。


キャリア・コンセプトを商品コンセプトのフレームで扱うとどうなるのか? 本題はそこが焦点なのだ。そこからの視点によって見える課題に触れてみよう。


■コンセプト策定の要素からフレームを理解すると


キャリアは自分自身を商品化した時の見立てということを前提にすると、商品コンセプト同様、3つの要素で構成される。ニーズ・シーズ・アイデアである。ニーズは自身のキャリアに価値を感じる雇用主・クライアントであり、シーズは活用しようとする自身の中にある強みである。アイデアは自分の価値を創造する直感にあたる。

そして、商品コンセプト開発ではこの3要素が3つとも揃って初めてコンセプトになること。実際に開発していくとき、3つのどれかが起点になっって進んでいくこと。この2点がポイントになる。よって、開発ルートは3種類ある。「ニーズが起点になってシーズ・アイデアを揃えていくニーズ・ルート」「シーズが起点となってニーズ・アイデアを揃えていくシーズ・ルート」「アイデアが起点となってニーズ・シーズを揃えていくアイデア・ルート」だ。 →下記pdf参照


コンセプトの分解 (pdf)


■それぞれ少しこなれた表現でキャリア・コンセプトにしてみよう


1)「世の中に必要とされることを見つけて、キャリアにしていこう!」というキャリア開発の視点がある。これはニーズが起点になっている。たとえば、所得格差が生む教育格差をなくすことが求められている、と着眼すれば、どういった自分になればこの課題を解決できるだろう?というアイデアと、他の人ではなく自分自身ならではの能力発揮はどんな形なのだろうか?というシーズが、追加質問としてなされ、それに答えることがキャリア・コンセプト(あくまでも候補の一つ)となる。


2)「自分の強みは何かを定義して、キャリアにしていこう!」というキャリア開発の視点は、他者との相対関係から自分の秀でた部分を磨くという方向で、シーズ起点という見方ができる。たとえば、対複数へのコミュニケーション能力に長けている、と仮説すれば、誰に対して活かすと価値になるだろうか?というニーズと、自分が最も楽しさを感じ、苦を感じない姿はどういった場面で生まれるか?、というアイデアが、追加される。


3)「自分の好きなことを見つけて、キャリアにしていこう!」というキャリア開発の視点もある。これは巷ではポピュラーになっているアプローチだ。たとえば、自分が料理が好き、とするなら、誰に対して提供することが価値を生むだろうか?というニーズと、似たような料理からも距離の置けるオリジナリティはどこで発揮できそうか?というシーズを揃うようにしなければならない。


昨今のみうらじゅんの「ない仕事」の作り方という話などは上記で言えば3番だ。アイデアに当たる好きな物はあくまでもきっかけで、興味ある情報を徹底的に収集するというシーズ構築と、それにラベルを貼って反響があるまで繰り返し世間に伝播させていくというニーズ構築まで行き着いて成り立っているのだ。こうやって追いかけてみると、「ない仕事」はジャスト・アイデアからは程遠い深さだ。


■もう少し追いかけてみると・・・


さて、商品コンセプト開発現場では上記3ルートのどれかに偏らず、それぞれの探求を繰り返しながら、混沌からグッとくるコンセプトを汲み取っていくのである。その延長で語れば、キャリア・コンセプトがどれか特定の方向からだけというのは少々狭いものと言えよう。


もっと付け加えさせてもらうと、商品コンセプト開発で3ルートをぐるぐる回しながら心の奥底で期待しているのは、ひょんなことから出てきた変なアイデアや、想定外だった意外な顧客像だったり、陽のあたることのなかった変わった技術とかが発掘されることなのだ。


つまり、キャリア・コンセプトを策定でもがいているうちに出てくるセレンティビティこそが鉱脈からの金属音なのだ。


2016.2.29

ページのTOPへ戻る