抽象的なお題を面白くするコツ「分解×ラべリング=全体」

抽象的なお題を面白くするコツ
一般的なお題、特に利用頻度が多いわりに抽象的な単語は結構、退屈です。熱く語っても、相手の興味を惹けず自動的にスル―されてしまったりします。


まずは振り向いてもらうための注意喚起に「面白いね」的な要素を提供したいものです。その時の書き手側のコツとして、「分解×ラべリング=全体」があります。


自分は、こういった加工手法が好きなのでよく使います。過去の近況報告でも何回も登場するパターンですが、自然とオリジナリティが出るので、結果として、耐久時間の長い内容(出てくる事例は古くても)になってくれます。


以下、四つを抜粋して並べてみました。


その1 ■感情のKPIなんてどうでしょうか?


感情はコントロールするものではなく、そもそも感情にコントロールされているわけで、折り合いをつけていくものと思っています。「肉体の皮膚感覚」が暑い寒い柔らかい硬いといった肌の反応だとすると、「精神の皮膚感覚」としての喜怒哀楽ですね。心の肌みたいなものです。


そして、皮膚感覚であれば、感じたものが行動の始まりになって、すごく暑かったら涼しいところを探すし、すごく寒かったら厚着するといった動きにつながります。これを喜怒哀楽に当てはめると、すごく楽しかったら記録に残そうとするし、すごく怒ったら批判してしまうなんていう精神の動きにつながるわけです。


暑い、寒いにもスケースがありますよね。温度計の数字のごとくデジタルなものから、うららか、温かい、暑苦しい、ひんやり、薄ら寒いとか定性的なものまでいろいろ表現方法があります。


じゃあ、喜怒哀楽も作ってみたら、それも体温を測るような定量っぽい感じ、つまり、KPI(キー・パフォーマンス・インデックス)なんてありかなって考えたりします。


◆怒りのスケール化


・イラ:
  イラッとするのイラ。不愉快さの最小単位
・イライラ:
  不愉快さが頭の中全体に行きわたたった状態
・イライライラ=3イラ=1ムカと単位がアップ
  不愉快さを言語化できる状況
・ムカムカ:
  不愉快さに対して何らかの具体的な行動を取ることを決めた
・ムカムカムカ=3ムカ=1コラと単位がアップ:
  不愉快さが怒りになって、相手に伝わる最小限の表現行動
・コラコラ:
  怒りを主体的に行動で表現する状態
・コラコラコラ=3コラ=1キレタ・・・とか?、お任せします(笑)
  自分史上、最強度の怒りの表現行動


イラ→イライラ→ムカ→ムカムカ→コラ→コラコラ→キレタ
7段階のKPI完成! 中央(ムカムカ)が怒りの平均の目安ですかね。


◆喜びのスケール化


・ウフ:
  愉快さの最小単位
・ウフフ:
  愉快さが頭の中全体に行きわたたった状態
・ウフフフ=3ウフ=1ニヤと単位がアップ
  愉快さを言語化できる状況
・ニヤニヤ:
   愉快さに対して何らかの具体的な行動を取ることを決めた
・ニヤニヤニヤ=3ニヤ=1ワーイと単位がアップ:
   愉快さが喜びになって、周囲に伝わる最小限の表現行動
・ワーイワーイ:
  喜びを主体的に行動で表現する状態
・ワーイワーイワーイ=3ワーイ=1コワレタ・・・とか?、これもお任せです(笑)
  自分史上、最強度の喜び表現行動


ウフ→ウフフ→ニヤ→ニヤニヤ→ワーイ→ワーイワーイ→コワレタ
同じく7段階のKPIになりました。


「今日は、ニヤニヤ(+4点)が1回、ウフフ(+2点)が2回、ムカ(-3点)も2回だった」とか。で、「たし引き+ウフフ分だけ喜びの多い日だったなあ」なんてね。


その2 ■成功と失敗から離れる3方向について


成功-失敗はセットです。そして、あくまでも事象を相対化してから判断できるものです。Aに比べて私は成功、Bに比べて私は失敗、平均に対して私はやや成功とか、どうしても比較対象が必要です。


この個人の成功-失敗という相対化された世界は比較対象がC,D,E・・・ってな塩梅で登場するので比較頻度が無限大です。収入で、ステイタスで、老後の安心度で、という比較場面もキリがありません。


よって、相対化から抜けたいと思うことになります。他人と比べないってやつですね。これは「相対化しないもの=絶対化」と括れそうですが、ここにバリエーションが3つほどあります。


①未相対化
相対化という考えそのものを否定し、積極的に評価を保留し、他人と比べない。
→「他人と比較したってしょうがない、自分は自分だ」という
 思考をベースにした態度。


②前相対化
成功-失敗はある程度の土台があって出来ていると考える。生きてること、健康、そこそこの知力、これらが揃っていること自体、誰かと比較しても意味がないことを再認する。
→「今の状況そのものが有り難い、これで充分だ」という
 感情をベースにした態度


③超相対化
成功-失敗を徹底的に突き詰めて、自分を相対化し尽くしてみる。しかし、それでも何やら残っている、誰とも比較できない何かが自分の中にあるのに気づく。比較したくても比較する手筋がない。
→「なんだか成功-失敗って、どうでもよくなってきちゃった」という
 直感をベースにした態度


自分が評価される、自分を評価するという過程で生まれるちょっとしたゆらぎ、成功-失敗の軸にプロットするときに出てくる比較熱もこうやって冷却することができます。


まあ、誰もが自己評価の比較地獄から、思考・感情・直感を最大限に動員してるはずです。意識的に視点を変えるともう少し楽かもね程度の話ではあります。


その3 ■エコ・コミュニケーション


建前と本音の使い分け大国だった日本も変わりつつあります。ネット普及で建前が瓦解していくというか、本音のスピード感がそれを上回っているからです。また、建前にも価値があった(今でも一定の役割はある)が、それを支える建前維持の負荷が上昇していることもあります。


では、「タテマエ価値=建前でコミュニケーションすることのメリット」と「タテマエ投資=建前を作る・支えることの労力」に分解してみます。そして、「ホンネ=素の状態なので価値と投資は一致している」として単純化し、これらの相対関係がどうなっているかで、最近のコミュニケーション事例も交えて考察してみましょう。


・タテマエ価値-タテマエ投資>ホンネ
古き良きの日本から延々と続いた文化の背景にあるのは何と行ってもタテマエ価値が高かったことにあります。「かくあるべき」論が成立しやすかった時代はピラミッド状になった権威が社会を安定させます。ただし、タテマエ投資にも潤沢なお金や労力が必要だったので、タテマエ価値をマネタイズする仕組みが必要です。


【事例】原発事業の広報活動。
今となっては、なんだか壊れた冷却装置に似ているような・・・


・タテマエ価値-タテマエ投資≒ホンネ
経済状況が怪しくなってくるとタテマエ投資に耐えられなくなってくる組織や人が出てきます。ホンネで勝負と言うより、「もう格好つけてられない、勘弁してくださいモード」が実態にコミュニケーションを合わせようとする動機になります。


【事例】岩波書店の縁故求人宣言。
出版の縮小均衡を読み取ってくださいというメッセージか?


・タテマエ価値-タテマエ投資<ホンネ
ネット世界ならではと言えますが、メディア・コストが限りなくゼロに近づくと、タテマエ価値をホンネが上回ってしまう現象が起きます。少数の権威よりみんなの実体験こそ価値があるというホンネの集大成にタテマエが掻き消されてしまうということです。


【事例】Facebookのイイネ・ボタン。
イイネを押してもらえないのではないかという恐怖でホンネが書けないという人もいるけど


・擬似ホンネ価値-タテマエ投資<<ホンネ
ついでながら、タテマエが駆逐されるとホンネをコントロールしたいという欲求は新しい動きに向かいます。擬似ホンネを作っていこうという行動です。正確にはホンネちっくなタテマエですけどね。一瞬は成立してもホンネに駆逐されてしまうので、バレた時の反動も厳しく、作った価値が投資を上回ることは稀です。


【事例】食べログのクチコミ・スコア
サクラ・マーケティング(苦笑)


コミュニケーションもエコに向かっていますね。ただし、エコも入れ込みすぎると疲れるので、そのうちホンネ疲れのホンネが噴出し、タテマエ価値が復権する分野もでてくるでしょう。タテマエばればれだけどそれでいいっすよ、みたいな感じです。コミュニケーションのコモディティ化とも言えそうです。


その4 ■あなたは紹介価値の高い人か?


誰もが誰かに紹介されたり、紹介してもらったり、紹介したりします。紹介とは社会のインフラなのです。でも、紹介したくなるかどうか?については微妙に個人差があります。これは紹介価値の高低に関わっていると捉えることができます。


AさんをBさんに引き合わせるXさん、という設定で考えてみます。Xさんにとって、紹介価値は3つの価値で構成されていると表現できます。そして、これらは時系列で並べることができます。


①絆価値
XさんがAさんとBさんにメッセージを投げることで強化される絆の価値です。紹介とはポジティブなメッセージ、「あなたのことをよく覚えています」という既存の絆の自己評価をAさんに伝達します。よって、Aさんとの絆が再強化されます。


また、誰かを紹介してもらう必要を感じているBさんへはXさんの紹介行動そのものが「あなたのことを気にしています」というメッセージになり、Bさんとの絆が強化されます。よって、これらが絆価値です。


②贈与価値
紹介はそれぞれに具体的なメリットを期待されてなされます。これは結果が上手くいかない場合もありえます。しかし、マッチングが良く、この紹介が上手く言った場合、AさんにもBさんと合うことで生まれるメリット、Bさんにも同様のメリットが生まれます。


その結果、今度はXさんへのAさん、Bさんからのリターンが期待できます。Xさんが困ったときに何らかのサポートをA.B両名から受けることができる可能性が高まるということです。これは「贈与関係のような、保証はされてないけど、十分期待できる関係の形」なので贈与価値と呼んでみます。


③創造価値
たぶん、ここが最も重要なのですが、紹介とはAさんとBさんとさんの化学反応、それも新しい何か(ちょっとした解決策や斬新なアイデアなど)を生み出すための環境整備です。大げさかもしれませんが、最終的に付加価値が社会に生まれることがゴールなわけです。


これは「A+B<A✕B」の状態を示しています。そうならないケースもあります。むしろ、この創造的な発露まで行き着くほうがレアでしょうけど、これこそが創造価値の尊さであり、紹介が社会インフラと言える所以です。ここで生まれた社会への価値はXさんにも世間を通じ、間接的にメリットを享受できますし、創造的活動に参画したという充実感も得ることができます。


翻って、自分は紹介価値の提供者として十分かどうかが問われますね。AさんやBさんの立場でXさんを見てみましょう。紹介価値=絆価値+贈与価値+創造価値としたとき・・・


・絆価値を上げたいと思われる人物なのかどうか?
・贈与価値の期待に応える行動をしている人物なのかどうか?
・創造価値の歩留まり(成功率)をあげる努力を常にしている人物なのかどうか?


うーん、自分で書いてて耳(いや、頭か?)が痛くなってきたぞ(苦笑)。
いやはや、人生全て修行ですな。


2016.3.12

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