グリーンマウンテン戦略

◾️グリーンマウンテン戦略(使用自由ですw)


ビジネス書で展開される「こうすればうまくいく」理論群はすべて後付けです。あっ、自著も含めて早めに付け加えますけど、良し悪しではなく、そういうものなのです。


なので、「どうすればうまくいくのか?」にあまりにも入れ込んでいる読み手が、無防備にビジネス書で「こうすればうまくいく」理論を参照すると、「そうか、そうだったのか」現象を引き起こして、本来の世界から乖離した環境下で行動をとることになります。結果、あまり期待通りいかないのです。


たとえば、有名なビジネス理論(理論というより思考か?)で「ブルーオーシャン戦略」というのがあります。競合のいない世界をブルーオーシャンとして、競合だらけの過剰な競争世界であるレッドオーシャンに対比さえながら、「こうすればブルーオーシャンができる」という筋立てでまとめられたのがブルーオーシャン戦略です。


ちなみに、自分はこの「ブルーオーシャン戦略」をワークショップ形式で研修にしてほしいというクライアントからの強い要望で、市販された本をベースにグループワーク・セミナーを何度も実施しました。要点が明確で、内容的に優れた本です(ここ重要w)。


しかし、大いなる皮肉は「ブルーオーシャン戦略を実施したとされる事例となっている企業はすべてブルーオーシャン戦略を学んだことがない」のです。なぜなら、本としてまとめ上げられる前に成功したケースだからです。


ということは、もし、あなたがここでブルーオーシャン戦略を学んでしまうと、追いかけたつもりでいる掲載された企業事例とは異なる状況になってしまう可能性があるということです。「私もブルーオーシャン戦略を学びました」はこの時点で、「多くの人が身につけたレッドオーシャン戦略(そもそも戦略とは呼べそうにないけど)」になっているわけです。


さて、この流れで気になるのは、よくあるビジネス書パターンの「私が成功した理由は・・・だからだ。みなさんも・・・を身につければ成功できます」というフォーマットです。確かに内容は事実でしょう(だと思うけど)。ポイントは本人は自分が書いたビジネス書を読むことなく成功しているという背景の事実があることです。自分の本を読んだ後に自分が成功するという経験は、時間の流れから見ても、物理的にできないのです。


著者本人は試行錯誤の末、ビジネスでの成功を掴みました。「こうすればうまくいく」理論が存在しない段階からスタートしているからこそ、新しい「こうすればうまくいく」理論に行き着いたのです。そして、成功した後、その高みから振り返ってみてまとめたものが、ビジネス書として世に広められたのでした。著者の主張は著者の履歴であり、理論や公式らしきものは人生履歴のタイトルなのです。学ぶものでなく、楽しむべきものなのです。


こういったビジネス書は「どうすればうまくいくか?」志向の人が読むのはあまりお勧めしないのです。著者の成功は、理論前の著者もまだ試行錯誤の下で起こったことであり、理論となって公開された後とは異なる状況なのです。少なくとも、読者がなりたいと思っている著者の境遇とは全く異なる環境下に読者自身を置いてしまうからです。


むしろ、ここらへんはこの著者が理論や公式で垣根を作ったブルーオーシャンだから、遅かれ早かれ、みんなが赤く染めていくエリアなんだな、と遠巻きに目視できるが故にありがたいとさえ言えそうです。


実際に読んでメリットが大きい読者がいるとすれば、「うまくいっているがなぜだろう?」というセルフチェックとして利用することができる人です。読むことで行動を模倣するのではなく、今の行動の精度が上がるきっかけにできる人々です。成功のためより、成功に意味を与えるためですかね。成功体験後に今までを眺めることができる方々ということになります。


そこで提案。敢えて、ビジネス書やらの理論や公式らしきものを事前に除けながら商売を立ち上げるのをグリーンマウンテン戦略とよんでみてはどうでしょうか。つまり、手っ取り早くプランニングする魅力的な知識を見ないようにする戦略です。海からも程遠い山、青でも赤でもなく緑、というのがその極端さを象徴しています。成功事例なし、あるとしたら成功した後の自分だけ、という心意気です。


「ねえ、あのビジネス戦略書読んだ?」
「すまん。俺、グリーンマウンテン戦略だから」
・・・とか?


なんか、イノベーターのメンタリティになっちゃったかもw。


2017.6.2
(近況報告から加筆・修正)

ページのTOPへ戻る