帰京しました。
立命館アジア太平洋大学での一週間をご報告します。
■立命館アジア太平洋大学 講師顛末記
13日(日)
大分空港からバスで別府へ。指定されたホテルへ行く。その温泉ホテルは、前回と同じ宿で、なかなか泉質が良い。が、部屋の狭さにショックを受ける。タバコ臭く換気もままならない。「静かなところ希望」なのに、ツアー客なのか、ドアの外が騒然としている。即刻、フロントへ部屋の交換希望を告げる。しかし、「空きが無い」と返され、不愉快さ収まらず。ミステリーショッパーなら大喜びだ。(※)
冷静になろうと大浴場の露天風呂に入る。なるほど、良い。悔しいが、部屋の不出来も忘れてしまう。きっと、他のフロアは想像を絶するほどうるさいので、ホテル側が選び抜いた部屋なのだ、ということにする。
我ながら、短期記憶の弱さに呆れる。
(※)覆面調査:アラが多ければそれだけ報告書は書きやすいから
14日(月)
講義初日。今回は2月、それもバレンタインデーをまたぐ日程となっている。前回、8月実施の時は履修者180人という講座になってしまい、ワークショップが機能する人数をはるかに超えていた。あえて、学生が履修を迷うのではと期待を込めての設定である。それでも50名ちょっとの参加者は進行する側にとっても上限だ。
ホテルのある別府駅周辺は寂れ方が半端でないが、その分、気の効いた店舗はみな郊外にあり、国道沿いなどは結構にぎやかだ。生徒たちから飲食店情報を公募し、夕食は国道近くの割烹で、天丼を所望する。天丼600円、ビール570円なり。飲食費のバランスはよくないが、美味ければそれもまたよし。
15日(火)
講義二日目。ワークショップ中心の授業に生徒もリズムをつかむ。今回、初めての試みとして、所有する携帯電話会社名別に手を上げてもらい、グループ・インタビューをライブで行う。教室の中央に、5-6人対象者を集め、モデレーターとして仕切る。
周囲を取り囲む学生たちはそこから、携帯電話選択に影響を与える外的要因、内的要因を抽出するというセッションである。とんでもない回答やら、意味不明の脱線など、笑えるので、次回も継続実施とする。
ここで教えるきっかけを創っていただいたI教授と情報交換を兼ね会食をする。これまた生徒お奨めリストのすし屋へ。関アジ刺身、ふぐ肝和えなど地のものを堪能する。声を掛けてもらったのが3年前。まさか、この大学がここまでの存在感を持つとは思ってなかった。一週間温泉三昧というコマセで寄ってきた己が恥ずかしいやら、誇らしいやら。
16日(水)
講義三日目。定量調査の分析について講義を行う。ワークショップは与えられた消費者行動の数値データから消費者意識の仮説を考えるというテーマだ。社会人向けのものに比べるとはるかに易しい素材ではあるが、不思議と盛り上がる。
この日、最終コマは金曜日に実施予定の試験準備として、模擬試験を行う。
といっても、前回の問題をグループワークしてもらい発表するというものである。
夕方は、生徒たち数人とトリ天(※)定食の店で会食。とにかく盛りが凄く、ご飯はおひつで運ばれ、お代わり自由となっている。彼らが一押しする理由はここにあると思われる。深夜、胸焼け防止用に胃薬を飲む。
(※)トリ天:鳥のてんぷら。大分名物とのこと。
17日(木)
講義四日目。仕事も持ち込んでいるので、早めのバスで霧が立ち込める丘の上のキャンパスに入り、控え室でPCを打つ。授業はマーケティングという観点から、消費者行動論応用について語る。やはり、本業本丸の話なので、故郷に帰ってきた感がある。
「課題→個人ワーク→グループワーク→発表→解説→講義」を連続で繰り返す。講義そのものが最後に来るパターンである。このほうが、モチベーションも理解度も、そして、こちらがもっとも期待している「気づき」も多いようだ。
夜は、地元生徒が絶賛する店へ生徒有志とともに向かう。しかし、地図の完成度が低いため、場所が良く分からず、約30分放浪の末、断念。別の店へ。生徒たちがなぜこの大学に進んだか、満足度はどうかなどを聞かせてもらった。
3期生ぐらいになると不便承知で選んでいるので、前向きな発言が多い。しかし、それだけでなく、正確に自分の意思を語れることに感心し、同時に勇気付けられる。
あとは地図の書き方だけかもしれない。
18日(金)
講義最終日。教室の外は相変わらず霧で真っ白だ。今日は試験である。二コマの授業がその前にあってからのテスト、という段取りになっている。なぜか、ワークショップの切れ味が良くない。
よくよく思い出してみると、前回は最終日が台風で休校になったので、元になっている課題は未披露だった。ワークショップは使い込みながら、ブラッシュアップしていく。粗い手触りはそのせいのようだ。
引き続き、試験へ。韓国人の大学院生に監督を手伝ってもらう。いつも通り、街中にありそうな話だ。それを消費者行動の立ち位置で語ってもらう、というのが問題である。
今回は、能力のバラツキが少ない。履修人数のせいか、それとも、学校自体が落ち着いてきたせいか。去年は飛びぬけて優秀な生徒(韓国人の女性)から、何しに来たか理解に苦しむ学生(日本人の男性複数)まで、講師泣かせだった。
最後の夜ということで、生徒に蛇ん湯(へびんゆ)という、秘湯へ連れてってもらう。地元で、知る人ぞ知る温泉だそうだ。しかし、川の湧き湯で、明かりもなく、脱衣所に屋根もない。真っ暗で足元もよく見えず、おまけに雨も降っている。
貸切なことは喜ばしいのだが、隣に人がいても気がつかないだろう。メガネが水滴と湯煙で曇り、横山やすし状態。
そして、昨日、発見できなかった居酒屋へ向かう。これも、地元で、知る人ぞ知る居酒屋とのこと。確かに、普通の人が入れる柔い佇まい(やわいたたずまい)ではない。こちら以上に店の人が動揺しているのが分かる。身内客しかこない店のようだ。
「APU生徒の・・・さんから教えられて・・・」と、ぎこちない説明で、やっと厨房に安堵の空気が流れる。遠い親戚程度には扱ってもらう。さすがに魚はどれも秀逸。お勘定は破格の安値だった。きっと、家族割引が適用されたのだろう。
以上、顛末記でした。