ヤスハラ・マーケティング・オフィスの近況

03月29日

【ヤスハラ・マーケティング・オフィス10年レビュー駄文報告書】
第三章「商い分析」・第一項「顧客像」


すっかり忘れていた弊社10周年のレビューです(笑)。


今回は本丸の話です。


個人事務所(Being)、マーケティング(Seeing)、コンサルタント(Doing)がビジネスとして、それも10年ほど続く商いとして、どの辺がポイントだったのかを振り返ってみます。もちろん、コンサルティングをする相手である顧客という存在が支えとなっています。まずはそこからです。


■顧客像から振り返る商い


個人事務所ですから顧客企業は小さい会社だろうと思われがちですが、弊社では大きな会社とのお付き合いが多く、構成比は半分以上です。なぜ一人で大人数の会社のニーズに応えられるのかというと、これが非常にシンプルでして、大企業全体を顧客として捉えてないのです。


マーケティング部門や広告部門や事業部と呼ばれる単位を顧客として考え、そこでの希望にあった深いサービスを提供していくことで、一人でも十分に成立する商いになっているのです。


大企業は大きなピラミッドに見えます。その通りです。しかし、その中には、いくつもの部室があって、それぞれの役割分担によって全体を機能させる仕組みになっています。マーケティング部や事業部もその一つです。これを小さなピラミッドに見立てることができます。


部門長以下、そうですね、大所帯と言えども多くても30名ほどです。10-20名などは珍しくありません。この人数幅は企業と見なせば小さな会社に属します。個人のコンサルタントが最も相応しい規模に捉えることができるのです。


一方で、扱う売上規模、マーケティング予算は大きく、そこでの価値創造、費用効率というテーマは他部門以上に重いテーマなのです。その数%(もしかするとコンマ数%)の投資費用でコンサルティングを雇うのにメリットを感じる企業も沢山いるのです。


逆に、部門が抱えている悩みを大きなコンサルティング会社や広告代理店で対応してもらうには、全社的になり過ぎて実務でのコントロールがしづらいと考えているところもあります。まあ、個人に向かって数人のメンバーが相談し、実践していく形式のほうが何事にも素早いのは自明ですね。


こういった顧客像の方々との仕事を続けながら今日まで来たわけです。比較的長いお付き合いの会社が多いのはきっと人間的な相性もあるでしょう。


しかし、部門内のマーケティング活動には未だ手をつけられずに放置されている潜在的なニーズが重層をなしているため、次の案件、次の案件と連鎖していくことが大きいと感じています。


・・・続く・・・と思う

03月24日

◆B2B企業のコンサルティングがスタートしました。B2Bマーケティングで有り難いところは顧客像が見えやすいので、人物関係図は作りやすいところです。難しいことは顧客人物が多岐に渡るので、人間相関図が複雑になることです。まあ、痛し痒しですね。


クライアントが素材供給会社ということもあり、顧客企業との関係構築が商品の開発段階から始まります。よって、相手先が商品化に成功して初めて有益なビジネスになるため、先方の意図を含めたマーケティング活動にしなければいけない点が鍵ととなっています。


そこで登場するのが、シナリオ・マトリックスです。自社(ここでは弊社のクライアント)とその顧客企業が協同して目指す理想のシナリオと、自社だけが避けたいシナリオ、顧客企業だけが避けたいシナリオ、両者が一致して避けたいシナリオの4つを用意するものです。


現在の協同作業の進捗内容を評価するとき、どのシナリオに近いかで今後の対応を客観的に討議していくためのツールです。天国と地獄一覧表とも呼べます(笑)。


◆木曜日、金曜日と定性調査が実施されます。あるロングセラーになっている消費財の利用実態と、新しい提案への受容性を見ていきます。今回新鮮なのは既存ユーザーの範囲を広く解釈し、あまりフォローできていなかった人々も対象にしている点です。


成熟市場でロングセラーとなるとユーザー像が固定化してきます。これは実態としての固定ではなく、消費者調査そのものが固定的なフォームになっていくからです。良くも悪くも時系列で把握することに重きがおかれていくと、どんな商品もそうなっていきます。


対象商品が女性向けを想定してきた中、敢えて男性に聞いてみようという試みです。何がでてくるか楽しみと言えます。結構、自分とデモグラフィックが重なっている対象者なので、気恥ずかしい部分もあります(笑)。


◆今月はお世話になっている方々から個人的に相談される機会が増えています。少しでもお返しせねばいいけない借りの多い身分ですから、こんな自分でお役に立てるのであれば光栄なことです。


生業にしているマーケティングのお話をさせていただくだけですから、特に苦もありません。それに世間の様相を相手側の窓から覗かしていただけるので、社会勉強にもなったりします。


こうやって専門知識・スキルのバーター関係が増えていくのでしょうか。物々交換ならぬ知々交換ですね。将来、消費税が跳ね上がったとしても課税対象にならないのも魅力的です(笑)。

03月19日

【第62回マーケティング・ワークショップ研究会のご報告】


3月16日火曜日に平日セッションが実施されました。
参加者は11名でした。久々に平日夜が二桁、それも多忙月と思われる3月ですから、深く御礼申し上げます。有難うございます。


今回のテーマは最近話題の本「フリー(Free)をワークショップ形式でグループワークする!Ver.2」です。先月土曜日セッションで実施したものを紹介しながら、進化した討議を狙っています。


グループワークがアトム・テーマとビット・テーマに別れたお陰で、それぞれの特徴が出たのが面白かった点です。フリーはネット系の世界中心(=ビット)に語られがちですが、リアル系、それも物販系(=アトム)でも十分に考えることができます。


事例紹介のステップでは播磨屋ステーションの無料おかきがが挙げられました。典型的なアトムものとして印象的ですね。


もちろん、PRでの費用対効果もありますが、回転率の良くない高級食品であれば、賞味期限間近なものを廃棄に回すより無償配布した方が有効というアトムならではの側面もあります。結果的にエコロジーにまでつながるので、長期的なメリットを包含しているのもユニークな点です。


さて、本を「読んだ」をすっ飛ばして「使える」にしてしまおう!シリーズ第一弾も無事終了しました。


流行り本であれば刹那、泡沫、光陰な趣がありますが、何か共通の知的断面を場に晒すと、それをきっかけに、諸事万端、森羅万象、有象無象にと話が広がっていきます。輪読とは異なった混沌を引き出すことこそワークショップ形式の妙味なのかな?、などと思うに至りました。


ということで、また折を見て実施します!

03月14日

【第61回マーケティング・ワークショップ研究会のご報告】


3月13日、良い天気に恵まれた東京・目黒にて、土曜セッションが実施されました。参加者は8名です。有難うございます。ちょっと自然の中でぷらぷらしたい陽気にも関わらず、壁に囲まれた中でうんうんすることを優先された克己心に敬意を供します。


今回のテーマは「リフレーミング・ツールを活用してみる」というものです。以前一度、リフレーミングについては、その原理をワークショップ(→リファレンス)にしたことがあります。今回はその進化版です。


リフレーミングの仕方を8つに区分けし、それをマンダラートに落としこんで一枚のフォーマットで運用できるようにしました。この8つも大きく3つのグループで括れます。


◆組合せグループ:①同質組合わせ、②強豪並列化、③異質組合せ
◆時間差グループ:④未来取り込み、⑤過去取り込み
◆細分化グループ:⑥1番枠細分化、⑦消費者像細分化、⑧利用場面細分化


最近の日経MJから新商品をグループで選択し、その属する商品カテゴリーを上記8つの仕方でリフレーミングしてもらいました。リフレーミングの構造は簡単ですが、頭の使い方には工夫が要ります。


・対象商品を要素(属性、機能、便益)に分解する(ラダリングの構造ですね)
・ひとつの要素に焦点を当てながら、新たな世界との関係図を作る
・関係図に鮮度感・納得感の高い名称を与える


こんな感じに、理知的な入り方から創美的な終り方をしていきます。フォーマット利用では前半はスムーズに案内してくれますが、後半の創造的な部分は解決してくれません。個人のセンスを起点にグループで創発してもらうことに集中します。この辺りの勘所も鮮明になった示唆多い会でした。


リフレーミングはもともと心理学を出自としており、人の持つ固有の文脈が引き起こすネガティブな反応を和らげるためのものです。これをマーケティングの領域に埋め込むと、市場の常識化しつつある商品カテゴリー区分に対し、自社商品に光があたるような再区分をするものとなります。


※次回は3月16日の平日セッションです。こちらは前回の土曜セッションで実施した「流行りの本Freeを読まないで使えるようにする」のVer.2となります。土曜が先行する日程になってますので、このリフレーミング第二回目は4月の平日セッションで行います。


よろしくお願いします。

03月10日

今週は、物考えては書類作成に没頭する時間に充てております。一人で何でもできる仕事ではないので、合間に色んな方々に連絡をとりながら進めております。


■誰に聞くかこそ核心である


マーケティングの仕事において、本質は何かを知りたいときや、判断に迷ったときなど、いきなりWEBは役に立ちません。これは、ある目的で周囲全員に意見を聞いてはただの多数決に終わるのに似ています。一般論からの脱却こそ核心です。


行きたい温泉をお勧めの数のみで決めるなら、こと温泉に関して新たな発見に出会うことは難しくなります。つまり、数を頼りに道を辿るのは、すでに解決された謎のはずですから、そもそも自分が迷いを謎と認めてない証拠ですね。


人数がアテにならないときこそ、「誰に聞くか?」がナビゲーションの重要な一歩目になります。人への目利きが必須なのはもちろん、身近に温泉に詳しい人がいないなら、「誰の知人にそういった人物が存在しそうか」といった、網への目利きも要求されます。本選目利きと予選目利きかな(笑)。


自分はいつも誰かを探しています。本当に「誰か」であって、「こんな人物は?」といった条件もないまま、ひたすら「誰か」を見つけようとしています。


なにやら箴言ちっくですが、正確に言うと、出会った人すべてに「誰か」ではないか?、という視点で話すようにすることを心掛けています。何かに詳しい、何かに精通している、何かのネットワークにいる、という意味での「誰か」を一個の人の中に見出そうとしているのです。


これも人と人の繋がりですからWEBでしたね。やっぱりWEBは役に立つようです。すみません、前言撤回します(笑)。但し、こちらのWEBにはグーグルなるものはないので、自分で準備せねばなりません。ここが肝要なのです。


03月04日

3月となると、月末までに仕上げねばいけない仕事が出てきます。多くの企業が決算の関係を気にするからです。同時に、来年度の新たな仕事の依頼も出てきます。多くの企業が来季の実施を気にするからです。


自然の成り行きとして、打ち合わせ時間は加速度級数的に膨れ上がります。ちょっとしたミーティング・バブルでしょうか?


■プライス・バブル(Price Bubble)とプライド・バブル(Pride Bubble)


経済のバブルは、知覚と体感のギャップがある臨界点を超えたときに発生すると考えることができます。我々は自らの経済バブルで傷つき、連続するように近隣の経済バブルでも躓き、今日に至っています。


さて、日本という単位で見ると、もうひとつのバブル崩壊があるような気がしています。これを経済世界のバブルと区分けすると・・・


一つがプライス・バブル。文字通り価格に関する知覚と体感の格差が生む悲劇です。そして、もうひとつがプライド・バブル。自尊心における知覚と体感の差異が極大化し、弾けてしまう現象です。


プライス・バブルとは「知覚価格>体感価格」が極大化した状態
プライド・バブルとは「知覚自尊心>体感自尊心」が極大化した状態


説明を足すと、プライス・バブルを知覚価格と体感価格で捉えてみて、「知覚価格>体感価格」の乖離に体感がついていけなくなったとき、バブルが弾け、価格差を支えていたものすべてが吹き飛びます。


片やプライド・バブルでは、知覚自尊心(例えば「日本人は優秀であるという心情」)が体感自尊心で満たされている(例を受けて「日本人の優秀さが証明された事象」)うちは気持ちに摩擦熱が発生しません。しかし、「知覚自尊心>体感自尊心」が閾値を突破してしまうと、俄然、心的な葛藤が始まります。


築いた自尊心に揺らぎを与える反証例が視界に入る(「日本人は優秀であるという心情」VS「日本人が優秀でないと証明された事象」とか)となれば心穏やかではありません。


しかし、避けられるはずもなく・・・


→無視=見なかったことにし、見たいものだけを見る
→否定=それは特殊な一部の出来事であり、例外である
→攻撃=そんなことでいいのか、過去を思い出せ
→疲労=腐ってしまった、もう駄目なんだ


こんな順で、「知覚自尊心>体感自尊心」からの崩落を受け止めていくことになります。
経済が生む妄想も、経済大国が生む妄想も、覚めてみると痛いのです。


でも、どんな関係格差もいずれは≒な関係になります。そして、ここでやっと自分の足で歩き出さねばいけないことに気がつくのです。


→承認=そもそも自尊心は守るものではなく、創られるものである
→希望=ゼロから何を目指して創っていこうか?


ただし、時間はかなり必要ですな。

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