ヤスハラ・マーケティング・オフィスの近況

05月27日

最近、スティーブジョブズやグーグルなどが起点となってマインドフルネスという単語が徐々に拡散してきています。瞑想と言われるよりは、ビジネスへの具体的な有効性が明示されたりするので、少し娑婆っ気があって親近感があります。しかし、このマインドフルネスも残念ながら一個の商品となり、消費の対象と化し、矮小化されて扱われていくことでしょう。


話は少し逸れますが、昔、友人が「悟りダイエット」なるものを教えてくれました。瞑想して悟りに至れると、ストレスからくる間食や食べ過ぎが減り、最終的にはスリムで健康的な体になります、というアクロバティックなダイエットでした。そもそも悟ればダイエットしたいと思わないんじゃないの?といった突っ込みどころ満載な話です。


昨今のビジネス領域に導入されつつあるマインドフルネスもそういった矛盾をはらんでいます。心をクリアにすることで、よりビジネス活動が充実するという段取りにはお金への執着が流れているわけですから、やはり違和感が漂います。


さて、それでもです。マインドフルネスがこのように狭義に再定義され、金色に上塗りされながら市民権を得ていく現象だとしても悪いことではないと思っています。今の私たちにとっての必要悪ではないかと。根っこにある違和感こそが次のステップに向かわせてくれるきっかけと信じ、マインドフルネスというカタカナもいつかは本来の意図に沿ったものに還っていって欲しいからです。


■思考と感情をクリアにして仕事の品質を上げる方法


マインドフルネスとは呼びたくはありませんが、自分が行なっている「思考と感情をクリアにして仕事の品質を上げる方法」があります。せっかくなので紹介しますね。


1)頭蓋骨で妄想を括るワーク


仕事でちょっとトラブルが発生すると考え込んだり、いつも気になったりしますよね。トラブルは自分がトラブルと思ってしまうが故に気になる存在になってしまうわけですから自損事故のようなものであり、悩みすぎて疲れてしまうのであればそれは明らかに有害です。


そんな時、こういった反復してしまう思考を「それはあくまでも自分の頭蓋骨の中で起きているパニックでしかない」ことを意識します。 そもそも頭蓋骨の外ではいつもの普段通りです。何も起きてません。ですから「あー私の頭蓋骨の中がグワングワン妄想を繰り返している」と感じて、頭蓋骨の外となる自分の胴体手足、その周りの人々や空間もいつも通りに流れていることを確認します。


ただただ妄想が頭蓋骨に囲まれた現場で発生しているのを特定して、世界全体の話ではないことをチェックするのです。そして、また発生したらまた繰り返すだけです。「事件は頭蓋骨の中だけで起きている」そう思うだけなのです。大げさなセッションは不要です。電車やカフェでもすぐできます。


「無駄な思考頻度を減らす=頭がクリアになった状態に近づける」が目的です。


2)風船で嫌悪を飛ばすワーク


これは脳科学研究をしている知人から教えてもらった方法。ネガティブな感情を鎮めることで脳をクリアにするワークです。仕事で苦手な人っていうのはいますか? 私は感情のコントロールが上手いので、そういう人はいません!・・・嘘です。


しかし、人を嫌悪し始めるとどうしても意識がそこにいってしまいますよね。その人を避けようとする、否定しようとする、といった態度に出てしまっては仕事自体に支障が出ます。好きな人がいるのが普通なら、その反対側に嫌いな人がいても自然なことです。問題は「嫌い」という感情が増幅してしまうことです。


そこで、対人的にネガティブな感情が出てきたとき、このネガティブな気分を架空の風船を膨らましながらそこに入れます(もちろん、そういうつもりで)。そのネガティブを息にして想像の風船の中に吐ききったら、その口を縛えます。そして、手から離し高く遠くに舞い上がる姿を眺めます。


これも頭蓋骨の話と同様に、ネガティブな思いが立ち上がっているのに気がついた時にひたすら繰り返します。徐々に暗示となって自分の中に渦巻く感情を減らしてくれるでしょう。お風呂やトイレがオススメのいつでもできる方法です。


「余計な感情頻度を減らす=頭がクリアになった状態に近づける」というためのものです。


もちろん、実装済みなので効果はありますし、簡易的な使い勝手の良さが売りです。


さりながら、上記の2方法はあくまでもテクニックでしかありませんのでご留意ください。以前の近況報告にも書きましたが、信州松本に引っ越してから、定期的にお寺の瞑想会に参加し始めました。もう効果を求めることはなくなりました。きっと、どうでもよくなったのでしょう。


そう、マインドフルネスの習慣そのものを目的にしているのです。

05月21日


夏を思わせる5月の図
・・・自転車で歯医者へ通う途中にて


口内に不明の腫れがあり、ついに知人から腕の良い歯科医を紹介してもらい、通っております。予約していてもメチャクチャ待たされるのが難点ではありますが、そのプロとしての見極め、手さばきはさすがです。


実際、かなり危険な状況だったらしく、最悪は抜歯にブリッジという状況を回避できました。それにしても、こちらの先生は大量の患者を扱っているにも関わらず、集中力を切らす様子がありません。業種は違えど同じプロとして凄いなあと感服しております。


さて、この先生は独り言が癖のようで、自分の場合にも施術中に「(レントゲン写真を見ながら)これは・・・どうなっているんだ?」「(治療する手を一旦止めて)できるのか?」、聞こえるように言うのです。


どうも自信の表れであり、集中力を高めるための自問のようなのだが、無防備に口をドバーっと開けながらこういったセリフを聞くと、ただでさえ緊張しているのに、一層全身が凍りつきます。


歯一本だから良いものの、これが体の外科手術を部分麻酔で聞いていたら空恐ろしいですよ。集中のための独り言を止めてくださいとも言えないから、きっと、全身麻酔に切り替えてください!って頼むだろうなあ。


05月07日

GWが終わって、やっと日常へ。信州松本へ移住してから思いっきり仕事を減らしてますので、あまりマーケティングの話を近況報告で書くこともなくなってしまいましたね。


ということで、たまには仕事について書いてみます。せっかくなので、「今、最前線で悩んでいることは何か?」です。


かな~りマニアックなので同業者の方々向けですよw。


■ECでのコンテンツ提供価値と顧客育成、そして、新たな仮説


昔からの付き合いのあるECで、顧客ステージ(カスタマージャーニーと言われたりもします)をもとにどのようなコンテンツ提供が価値となって顧客へ響いていくのか?、は常に思案のしどころとなっています。


(本稿では、ブランド価値=商品提供価値+コンテンツ提供価値+リレーション提供価値、という定義で使っています・・・詳細は「ブランディングの基本」でお願い!w)


顧客ステージの階層を・・・・


カテゴリー関与者→
複数商品ブランド関与者→
当該ブランド検討者→
当該ブランド購入者→
当該ブランド再購入検討者→
当該ブランド再購入者→


まずはこんな感じで区分しておきます。次に、実際の行動データを組み合わせながら仮説を立てていきます。ここでは対象が消費財系のECなので、リピートが重要になるのはご存知の通りです。生涯顧客価値(LTV)に直結しますからね。特に、最初の当該ブランド再購入者のコンバージョン率を「F2転換」(FはフリークエンシーのF)と呼び、重要な分岐としてKPIになっています。


常時、このKPIがコンサルティング時のグループ討議の中心テーマです。そして、F1(トライアル発生時)の人々への働きかけがF2転換を進めるという前提で施策を実施してきました。もちろん、これ自体も重要な活動であり、顧客育成のマップに沿っていけばスゴロク的には正しく、それなりに結果を導いてきました。


この「F1から勝負を始めてF2転換率を上げていく」というのは送料無料や期間値引きといったハードセルになりやすく、コンサルタントとしてはあまり推したくないものです。なぜなら、顧客のコスト負担を下げることで、顧客の眼にブランド価値が上がったように見せる、本来の目指したいブランドの姿との乖離があるからです。


一方、リレーション提供によって顧客との関係を深めブランディングしていくには丁寧なアプローチが必要です。つまり、それなりの時間がかかるためにF1→F2という場面では効果が十分発揮できにくいわけです。ここで、顧客からのブランドロイヤリティ育成を慌ただしく構築しようという発想そのものがちょっと乱暴なのかもしれません。


そうなのです。ブランディングの打ち手が限定されるのです。もちろん、商品提供価値が最も試されているという中核は変わっていませんので、念のため。商品の体感以外にF2転換率に結びつく要素がないのかどうかという問いなのです、念のため。


さて、今回の新たな仮説はまったく別の視点から生まれました。それは、初回購入以前のカテゴリー関与者、複数商品ブランド関与者段階でのコンテンツ提供が、その後のF2転換率に貢献する、というものです。


専門的ですが、この見方が面白いのは従来の考え方を見直すきっかけとなっていることです。それは・・・


1)顧客ステージ階層(カスタマージャーニー)に沿って早くゴール(ここではリピーター)に行くことが最も良い
そうとは言えない


2)カテゴリー関与者、複数商品ブランド関与者は初回購入のための母数である
そうとは言えない


この1、2を組み合わせ、まだ当該ブランドへの興味がない状態でのコンテンツ提供、および、それぞれの階層の中でのコンテンツ回遊が充実したほうがF2転換率に良い。せかさない設計でできたコンテンツ提供が価値になるというものです。


カテゴリー関与者であれば自社商品とは離れた一般的なお題の中にオリジナリティのあるコンテンツを提供するということであり(ヨーグルトなら、世界のヨーグルトの作り方違いの動画とか)、複数商品ブランド関与者であれば商品選択に関するコンテンツ群を提供しようということになります(ガーデニング・グッズであれば、自宅の庭と商品機能の相性診断サイトとか)。


購入はさておき、「ここでの回遊を是とみなし、ここで回っていくための異なる階層別メルマガや異なる階層別の専門動画を充実させることは生涯顧客価値(LTV)に返ってくると考えてみよう!」ということなのです。そんな仮説をECが持つ大量の顧客データで追いかけてみようという話は、ビッグデータ時代ならではとも言えます。


確かに実感知としてですが、自分のクライアントの中でも継続期間が長い企業は受託以前の関係図(弊社への理解度と言ってもよい)がそもそも濃厚であることが多くみられます。※全部ではない点も強調しておきます。


まあ、こんな仮説がしょっちゅう浮かび上がるわけではないですけど、コンサルタントとしてはグッとくる展開であることは間違いありませんな。

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