ヤスハラ・マーケティング・オフィスの近況

11月22日

拙著「マーケティングの基本」が増刷になりました。重版出来(じゅうはんしゅったい)ですw。かれこれ17刷となっております。ご購読いただいた方々には深く御礼申し上げます。



ここ5年は半年に一回増刷がかかる感じです。このようなロングセラーぶりも皆様のご支持あっての賜物です。有難うございます。その支えて頂いてる部分ですが、具体的には以下の要素ではないかと理解しております。


1)マーケティングの社内研修やセミナーなどでのサブテキストしての利用
・・・講師の方々からの支持


2)ビジネス知識に関する専門サイトでのオススメ
・・・目利きの力のある方々からの支持


3)シリーズとして他の新刊との連動した扱い
・・・書店の方々からの支持


やはり、多層に渡る推奨者があってのロングセラーなのでしょう。光栄です!


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■ボーダーレスの流れにあるときの身の処し方・・・これでおしまい


さて、引っぱってきたお話も最終回。ボーダーレス化に対して、自らを守るために新たにボーダーを引いていく、です。


あなたと私を混乱させるボーダーレス化への2つの態度、「より高いポジションを目指せ」と「より誰もいないポジションを探せ」でした。最初に書いたやつですね。この矛盾している2つの方向を一体化することができれば、私たちの葛藤はかなり軽減されます。


そのために私たちは自らのボーダーを自らの回りに引くのです。枠が引ける場所に赴き、枠を引く。ボーダーレス化が生む混乱への対処方法です(ひとつではないけど)。



図表(pdf)


図表には場所の違いと線の種類でマトリックスが示されています。まずは枠を引けるレベルに4つ、「自分のサイトを持つ」「コミュニティを立ち上げる」「独立する」「起業する」。徐々に境界線が太くなるイメージです。


場所の距離も、目視レベル(目だけw)⇨微動レベル(ちょっと動く)⇨協力レベル(サポートとして大きく動く)⇨自立レベル(存在そのものが枠となる)ってな感じで進化します。


境界線が濃くなることが良いというわけではありません。むしろ、これら筆の太さ違いは、今いる自分の立ち位置によって選択が変わっていくと思われます。


もし、あなたが何かの組織(会社でも学校でも)にどっぷり浸かっているのであれば、ボーダーレス化に抗う方向に入る可能性が高そうです。そんな場合、自分のサイトを持つ、コミュニティを主宰する、といった細筆系の線でボーダーを描いておきたいものです。


一方で、あなたが何かの組織での居心地に違和感を感じているのであれば、ボーダーレス化を促す方向に体が向いていそうです。こういった場合、ちょっとした動きではなく、独立する、起業するといった、太筆系の線を準備してください。もちろん、いきなりはムリでしょう。目視・微動・協力といったステップを踏んで行こうとすれば良いのです。


ただし、細筆系で自分を慰撫することに執心してはいけません。あなたがボーダーレスの波に巻き込まれ、所属している組織からスポイルされることを想定しておく必要があります。また、渋々出世して中心部を目指したとしても、辛さは増すばかりで、減ることはないでしょう。太筆一本をお勧めしますw


さて、なんでボーダーレス化の話をこんなに掘っているのかというと、自分の子育てに直結しているからです。


世界的に集合教育が行き詰まりを見せつつある中、代替策を持たないまま学校に行かせることに危機感があるのです。大きなボーダーに入り込む(就職や進学)、ボーダー内の高みを目指す(昇進や競争)に、たとえ貧弱でもオルタナティブを持たせたい、ランドセルのどこかに引っ掛けておきたいのです。

11月02日

新生児100日間は育休中、っていっても育給手当はありません。ですので、先月末の東京出張も弾丸ツアーでした。


松本に移住してからは東京の仕事は俗に言う相談役のような仕事のみとなっております。そう、きっと貴方が「なにやってんだよ、あのお茶飲みに来て、だべって帰るだけの相談役って」と思ったこともあるであろう相談役にほぼほぼ近いのです。わたくしも若かりし頃はそう思っておりました。「サイテーだな」ぐらい口に出したかもしれませんw。


でも、こうやってクライアント先にお邪魔すると相談されることがメチャ多いいのです。ただし、こちらが答えを持っているわけではなく、相手の話をひたすら聞いて、ひたすら質問を投げ続けます。こうやって悩みをほぐして、決断を促すだけなお仕事も今日的でしょうか。


まぁ、コーチングとカウンセラーを混ぜこぜにしたような役割ですかね。ですので、昔からお付き合いのあるオーナーの方々のみとのお付き合いになっています。


■ボーダーレスの流れにあるときの身の処し方・・・その3


だんだん長くなってきたので、どこかでまとめてリファレンスに持っていきますね。


さて、境界線の消し方・書き方をリフレーミングという考え方で説明します一般的にはリフレーミングという単語はNLP(神経言語プログラミング)などで使われるものです。心理療法の一種だったりします。


構造としては同じです。枠組みを再設定するのでリ・フレーム・ingで、リフレーミングなのです。実は、マーケティング活動においてもかなり重要なツールなのです。マーケティング戦略を構築する主要な3要素にセグメンテーション(S)、ターゲティング(T)、ポジショニング(P)、三つまとめてSTPというものがあります。


この3要素は実務としては結構扱いが厄介なのです。なぜかというと抽象度が高くて、戦略の後に戦術を繋げる時、段差が大きいために問題を起こしやすい欠点があります。まぁ、欠点というよりは宿命と言った方がいいでしょうかね。なぜならSTPの作業も「捨てる」という作業に沿っている大切なプロセスですからね。


で、分かりにくいまま突っ走っても行動にブレが生じるだけですから、コンサルタントとしてはちょっとサポート・ツールで戦略と戦術の間を地ならししたくなるのです。ここで出てくる1ツールがリフレーミングです。ちなみにSTPとの関係から、他にもプロファイリング(ペルソナですね)、ラダリング(価値連鎖)が同列でツールになります。


マーケティング戦略 → サポートツール
セグメンテーション → リフレーミング
ターゲティング → プロファイリング(ペルソナ)
ポジショニング → ラダリング


・・・こんな関係になっています。気になる方は拙著「マーケティングの基本」でw。自分にとってリフレーミングはもっとも身近なツールでして、もし次にビジネス書を書くなら「リフレーミング入門」か!、というほどです。さすがに部数が見込めないから、きっとないと思うけどねw


少し有名な例でいくと、スターバックスの「サードプレイス」という概念もリフレーミングされたものです。単にプレミアム系でリラックスできるカフェであればまだまだ抽象度が高く、ブランドを展開していく際にブレが出やすい訳ですけど、サードプレイス=自宅と職場・学校に次ぐ第三の居場所、というフレームを与えると俄然、やるべきことに安定感が出ます。図書館に見えるカフェ、公園に見えるカフェ、というふうにブランドが目指す活動にまで昇華されます。


ポイントは、サードプレイスという単語を支えているのは自宅・職場(学校)という周囲を固める比較対象となる単語だということです。それも通常のカフェを規定する時には使わないような単語であり、ゆえに、枠組みが再設定された感じになるわけです。


個人のリフレーミング例であれば、みうらじゅん氏の「一人電通」という呼称もそれに近いですね。xxxライターとかxxxプランナーとか単独で自らの立ち位置を説明すると、誰もが持っているライターやプランナーへの先入観の枠の中に入っていくことになります。


ここでは、電通という巨大広告代理店を真逆の比較対象に持ってくることで、常に何かユニークなものを発信し、市民権を得るためのコミュニケーション活動をしている独自の存在に見えていくことになります。ただし、電通といった外部から調達する単語にはそのものが持つノイズのようなものがあります。よって、昨今の評判が微妙に本人にマイナスの影響を与えてしまうこともありますね。どんなツールにも欠点はあるのです。


リフレーミングは、成熟している市場や皆んなの固定観念が揺るぎない(と信じている)世界であればあるほど有効です。はっきり言って、ボーダーレス化はリフレーミング化とほぼ同義といっていいのではないかとさえ思っています。ただ、意図的な部分よりも自然発生的な部分が大きいいだけ。


では応用編で。自分の住んでいる松本市をお題にしてみます。松本市は、三つの「ガク都」(「岳都」「楽都」「学都」)をまちづくりのコンセプトにしてます。


以下HPより
<北アルプスなどの山岳観光都市の「岳都」、セイジ・オザワ松本フェスティバルに代表される「楽都」、そして、日本で最も古い小学校の一つとされる旧開智学校の開校や旧制松本高等学校の誘致など、教育を重んずる文化芸術の息づく「学都」です。>


ってことらしいです。これも3方向を訴求し、優先順位らしきものを提示しているので戦略っていう扱いができます。しかし、残念ながら現状をトレースしただけのスローガンなので、具体的な活動(戦術)に落とすには抽象度が高すぎます。勝手にですが、これを自分なりにリフレーミングしてみます。


「岳都」もそのままでは山の近くにある都市の一つになってしまいます。山だけなら富士山の麓の街(富士市とか三島市)の方がよっぽど「岳都」なのです。で、こういった埋没を避けるためにも再規定で新たなボーダーを引いてみます。


海の古都・鎌倉、山の古都・松本。なんてリフレーミングすると、松本市が人気の鎌倉市と同列になるわけです。念のための付け加えますが、これはあくまでも目指す方向性を宣言したものに過ぎません。実態はこれからなのです。


「楽都」も音楽文化の度合いが高いのはどう考えても大型都市ですから東京(国内ってことでくくればですけど)ってことになります。弦楽器の工場が多く、鈴木メソードのような背景を持っているので、これらを活用すればユニークな立ち位置が具体化できます。


鍵盤の音楽都市・浜松、弦の音楽都市・松本。なんてリフレーミングすると、ピアノで有名な浜松との対比で、浜松の謳っている世界の音楽都市とリンクされ、新しい場が見えてくることになります。


「学都」に至っては、正直、過去の話だけでして、あとは信州大学があるくらいです。これでさえ、どの地方にも国立大学はあるわけで、つかみどころが出てこないなかなか手ごわいコンセプトです。きっと、韻を踏むために3番目に付け加えてものだろうと想定できますがw


ちょっと強引だが、日本三大学都、仙台・筑波・松本・・・・とかね。他の二つには学都として市民権を得ているであろう地名です。ただ持ってきて並べるだけでも、自称学都から世間から見える形の学都にまでリフレーミングできます。繰り返しますけど、目標の絞り込み作業の一つですから、現状がそうかどうかは不問です。


いずれにせよ、リフレーミングが戦略と戦術の間にあることを知っておくと、使い勝手も最適なものになります。さて、ボーダーレス化へこの境界線マーカー(リフレーミング)で、新たな自分の所属を創造する。これが、メルトダウンしていく(ように見えるだけかも)世界と上手く折り合いをつける方法ではないかと思っているわけでして、この続きはまた次に。ああ、いつまで引っ張ることになるのだろうかw


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