ヤスハラ・マーケティング・オフィスの近況

08月30日

拙著「<新版>マーケティングの基本」が増刷になりました。2019年に新版になってから7刷目です。2009年の初版から7万部を超える部数にまできました。ご購読いただいた方々には御礼申し上げます。いつもながら、テキストとして採用していただいているマーケティング教育関係の方々にも感謝しております。



◆ロングセラーは著者にどういった影響を及ぼすか?


7万部と言っても、12年の長きに渡っての増刷ですから、1年あたりは5千部ちょっとの計算です。ベストセラーではないですけど、ロングセラーと呼ばれるようにはなりました。いつも「増刷です!」という告知に終始してきましので、今回はこのロングセラーは著者に何か影響を与えるのか、という話を綴ってみます。


本書が発売5年ぐらいから徐々に感じてきた事ですが、どかっと売れるわけでもない、かといって途切れて消え入るような気配もない、という状態は著者、このヤスハラのことにかぎっておりますが、不思議な感覚にさせます。


スキューバダイビングをする方はご存知だと思うのですが、水の中で沈むでもなく浮かび上がるでもない状態を中性浮力と言って、海の中のほどほどの水深に身を保つのは大切なスキルです。上手になると自然な呼吸だけでこの中性浮力を保てるようになります。


ロングセラーの本は常に書店に自著が存在してくれます。とはいえ、大々的に積まれて売れるような扱いでもありません。この状態は中性浮力が働いているかのようです。しかし、スキルは皆無です。常に一定の読者が、決して大量ではなくても、支持してくれる循環にいることを意味してますから、狙ってもできるようなサイクルではないのです。


一方で、ヤスハラもベストセラーに憧れて本を執筆しています。どかーんと世間の話題になって、おおーっという部数が販売されることに純粋に羨ましさを感じます。まあ、人としての器は小さめですからねw。


しかし、こういうロングセラー状態を自分ごとで眺めていくと、何かこれはこれで凄い力が働いているのではないのか? そんな畏敬の念に駆られたりするのです。海の側が勝手に水中を漂わせようとしている感じです。


一冊で有名になるとか、印税で生活の全てを潤わせるといったことには全く縁がありません。相変わらず場末のコンサルトとして地味に立ち回るしかありませんし、印税は有難い収入の補填にはなっても仕事をしないで良いわけでもない。


その不可思議さを噛み締めながら仕事にダイブして行け!、といったメッセージを12年目の増刷に垣間見るのです。でもって、今日も「あーでもない、こーでもない」とかブツブツ呟きながら、執筆やら資料作りをしているのさ

08月12日

去年から執筆中心で、コンサルティング案件も全部テレワークになっていて、どこかに出向くことはゼロになりました。近隣のカフェだけw。


でも、信州生活なので、たまにこんなところも家族と行きます。(読んでる方を煽っています。ええ、ぜひ、お好きな場所に早く移住やら、二拠点しましょうよw)


2915098_2552476213_225large.jpg
ちなみにここは先週末の白馬。自宅から車で1時間半ぐらい。松本からはくねった山道がほとんどなくて、車に弱い娘も快適に行けるのが有難いのだった。


さて、仕事の話に戻ります。現在、プロジェクト案件でクライアントの次世代事業のためのコンテンツを作るというのがあるんですけど、それがほぼ完了。細部の調整が今後発生しますが、まずは一段落です。全部テレワークで、一年かかってます。


と思ってたら、今月から別のクライアントの新規リーサーチ手法開発の案件がスタートするのでした。労力の分散からいうと、非常に効率がいいですな。「流れが良い」=つまり、まだこの仕事を続けなよ、のサインってことでしょうか。これも毎週一回のテレワークのみでいきます。もちろん、その分、資料の作成や成果物へのまとめ作業の時間は発生します。松本周辺は魅力的なカフェが多いので助かるのだ!


ヤスハラは従来、ファシリテーション型コンサルティングというのを標榜してました。うむ、よーく考えると、テレワーク主体になった時点でファシリテーションは前提条件になっています。必須。むしろ、テレワークで要求されるのは、プロジェクトメンバーが集うこと自体に意味を提供することです。一期一会っぽくする、この場は二度とないようにする、録画再生を無意味にする、みたいな?


プロジェクトというと役割分担があって、発揮してほしい専門スキルも明確な場合が多いですよね。しかし、テレワークはプロジェクトのまま役割先行で動かすと、単なる報告会、情報交換会になって、「じゃあ、私の番になったら教えてね、それまでオーディオ・オフします」が正当化されちゃうのです。


なので、役割拡張を意識してます。役割以外の部分をコンサルタントが意図的に突っ込んでいく、守備範囲を超えた質問に変えて、メンバーの予定調和をかき乱すのです。「Aさんの話って、この延長線上だと、Bさんの前言ってた全員合意してた部分とぶつかっていきそうだね、どうしようか?」とか、一見スムーズにテレワークの会議は進行してそうなのに、深堀しては誰かに茶々を入れる話に変えるのです。「個人的な意見だけど・・・」といった語りが飛び交い始めます。自分のテリトリー外に関しても意見やアイデアを求めることで、場は温度を上げ始めます。


そしてもう一つ。オルタナティブ因子を定期的に流し込みます。「Cというやり方をやめて、Dというやり方だとこんなことも起きそうで面白いかも?」なんてやや荒唐無稽の代案を提示し、誰かに否定してもらう場面を作ることです。「ええ、それは違うんじゃないかな? よし、ここはミュート解除して話さなきゃなあ」をお待ちするわけですなw。ヤスハラの話を否定してくれるのはウエルカムです。その否定する論理が、プロジェクトの軸を強固なものに鍛えてくれます。特に、一本線で走りやすいプロジェクト後半には有効です。


こんなことを書いてみると、ファシリテーション型というより、もう少しメンバーの関係性が複雑になることを志向する形態に思えます。なので、これをコミュニティ型コンサルティングと呼んでみようかなと思い始めているのです。

ページのTOPへ戻る